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研究概要

本研究はさまざまな分野が協働する学際研究です.したがって,まずは研究会を通じた相互交流,過去の研究のレビュー,あるいはこれまで得られてきた考古遺物(たとえばイラン北部で得られた資料など)に関する予備的分析を通じ,問題意識の擦り合わせ,取り組むべき問題の明確化を行います.より具体的には,過去の研究や資料の整理・分析を通じて,考古学的な視点からの考察だけでなく,数理的解析や系統推定あるいは認知科学的考察を行なっていくにあたり,どういったデータが有効であり,不足しているのかなどを考察していく予定です.

こうした予備的研究を踏まえた上で,次はこれまでの研究や資料にもとづくだけでなく,各視点にとって有効かつ必要な形で,新たな資料やデータを実際のフィールド(西アジアや日本)において収集していきます.さらにそれらを考古学,数理的解析,あるいは科学哲学の観点から考察することにより,文化の歴史に関する総合的な理解を得ることが目標となります.

各グループの研究概要

考古学グループ

考古学グループは,本研究の核となる考古遺物の収集と整理,つまりデータセットの構築を担当します.本研究では,西アジア(主にイラン)と日本列島の先史時代の二領域を対象としてます.西アジアは,人類最古級の文化現象の痕跡が確認されており,それゆえ文化の歴史を扱う諸分野にとって非常に重要です.また,日本列島は,世界でも有数の密度で発掘調査が行われてきた結果として,時間と空間とを詳細に特定・配列できるでータ群の取得が可能です.なおかつ海洋で囲まれた島嶼という完結したエリアであるため,文化の系統の抽出とパターン化が比較的容易であると考えられます.いっぽうで,こうしたデータは数理解析を行うことを想定して収集されたものではないため,他グループと共同しつつ,新たなフィールド調査を行い,各グループにとって有効なデータを再度収集します.

進化人類学グループ

進化人類学グループは,考古学グループによって収集されたデータの解析を担当します.文化現象の総合的理解には,文化多様性がもっとも顕著に現れる集団レベルと,それを生みだす文化伝達を扱う個体レベルの両面から迫ることが必要です.考古遺物の空間的・時間的な多様性のパターンを空間統計学,集団遺伝学,ネットワーク科学の手法を用いて定量化することで,集団間の文化構造,いわゆる「文化圏」を明らかにします.こうした統計解析には現象を単純化したモデルの存在が不可欠ですが,机上の空論に陥らないようにするため,その妥当性については考古学・哲学グループとの議論を通じて検討します.

系統学グループ

系統学グループがめざすのは,出土する考古遺物の集団間の多様性,もしくは考古遺物そのものの変異から,集団や考古遺物の系統関係,つまり,各文化の先祖・子孫関係を推定することです.系統学グループは,進化人類学グループとは推定した系統樹をベースに文化の拡散プロセスの復元を試み,哲学グループとは過去の文化系統学研究のサーベイを通して文化進化学のあるべき姿を模索し,さらには,考古学グループと共同して人間が多様性をどのようにとらえているかという認知の問題にも切り込みます.

哲学グループ

哲学グループが加わることで,分野間のすれ違いを修正し,各グループの知見を総合する作業が円滑にできます.異分野間では,同じ概念が異なる意味で用いられていることも珍しくありません.こうした概念的なすれ違いは,分野横断的な研究を難しくしている要因でもあります.また、考古学のような人文学・社会科学領域と進化学・認知科学のような自然科学の領域の方法論や価値観の違いを明確にし,そうした違いを踏まえた上での適切な連携と関係性の構築をめざします.

研究経費

課題設定による先導的人文・社会科学研究推進事業(領域開拓プログラム)
歴史科学諸分野の連携による文化進化学の構築

平成26年度: 2,000千円
平成27年度: 3,450千円
平成28年度: 3,200千円
平成29年度: 2,700千円